(2).メディア・ビッグバン

 我が国の放送ネットワークは、ご他聞に漏れず郵政の様々な規制と保護下で、NHKと民放キー局が支配している。BS衛星放送受信数も1000万世帯を超えたものの、NHKが8割を占め、民間のWOWOWは開業6年でようやく230万。CATVも、もともと難視聴対策からスタートしたため、総受信数は1100万を超えたものの、都市型CATVと呼ばれる多チャンネルの自主放送局受信数は400万弱。ホテルのアダルト番組でおなじみのアナログCS衛星放送は10万程度、音楽主体の衛星ラジオ放送も同程度にすぎない。

 一昨年、CS衛星デジタルテレビ開局を目指し、商社連合の「パーフェクTV」と、AVレンタルチェーン最大手CCC(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)と米国トップの衛星事業者ヒューズが組んで展開する「ディレクTV」計画が動き出した。地上波やBSも、紆余曲折はあったが、ハイビジョンなど唯我独尊のアナログ技術にようやく見切りをつけ、遅ればせながらデジタル化に向け本格的に歩み始めた。
 その矢先昨年6月、業界に激震が走った。世界のメディア王として君臨する豪ニューズのルパード・マードック会長が、「JスカイB」構想で日本進出を発表。さらに一週間後、ベンチャーの雄ソフトバンクの孫正義社長と組み、テレビ朝日株21%取得を発表、メディア業界は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。黒船来襲、「メディア・ビッグバン」の幕開けである。

 デジタル技術の革新と、規制緩和を追い風に「メディア・ビッグバン」は、大きなビジネスチャンスをもたらす。CS衛星デジタル放送はチャンネルや番組ごとに料金設定ができ、コスト面の垣根が低く、一般の企業でも放送チャンネルを自前で持てる。パーフェクTVの場合、5Mビット/秒のテレビ放送用のCS利用料は年間6000万円程度、月額1000円で5万人の契約者を集めれば年商5億と、番組制作や調達のコストなどが別途かかるが、小人数で運営すれば十分利益がだせる。数万人対象の専門チャンネルの運営を目指し、多くのベンチャー企業が参入した。

 番組ごとに課金するPPVの仕組みでビデオなどコンテンツの流通も変わる。企業が製品のプロモーションビデオを放送することも可能。今でも地上波やCSで映像やデータを配信できるが(トヨタも昨年より活用を開始)、本格化する衛星インターネット、そして2000年にはBSもデジタル化、アイデア次第で多様なビジネスが開花する。


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