(5).デジタルTVの動向

 家庭向け「情報家電」の主役をめぐるもう一方の動きからも目が離せない。パソコンにテレビの機能を取り込むのでなく、テレビにパソコンの機能を取り込むというアプローチである。主に前者はマイクロソフトを筆頭とする米国企業が、後者は欧州各国の通信・放送事業者が主体となって推進している。

 衛星デジタル放送のテレビ用受信端末(STB:セット・トップ・ボックス)は有料番組の申し込みや課金のためにモデムを内蔵してネットワーク化された。さらに今後インターネットやデジタルテレビ、電子マネーなどの新技術が組み込まれ、様々な双方向サービスが可能となる。STBの基本機能はパソコンに近づくが、操作はあくまでリモコン。テレビの体裁は崩さない。欧州ではこうしたサービスが次々と始まっている。

 我が国でも、昨年テレビ内臓、STB両タイプのインターネット・テレビが登場した。画面の粗さや、OSやブラウザをROMとして搭載したためバージョンアップができないなど、市場の形成にはいたらなかったが、これにはデータ放送などのインフラ環境が整っていないという要因も大きかった。ソニー、松下など家電系メーカーはテレビからパソコンへ、そしてNECや富士通などコンピュータ系メーカーはパソコンからテレビへの動きを強め、家庭市場をめぐる両陣営の開発競争が繰り広げられている。

 マイクロソフトは、テレビをモニターとして用い、データ放送(衛星・地上波)や電話回線経由のインターネットと有機的に連動させようという「SIPC(シンプリー・インタラクティブ・パーソナル・コンピュータ)」構想も持つ。ウィンドウズCEは携帯情報端末の他、STBや家電製品向けのOSでもある。デジタルテレビの受信機能やインターネット接続機能などが、今後CEに統合される計画。WebTVというSTBタイプのインターネット端末のベンチャー企業を買収したのもこの戦略の一環である。

 オラクルもコンシューマ用NC(Network Computer)で対抗、サンマイクロシステムズもJavaベースのインターネットSTBの開発に意欲的で、パソコン市場と同様デジタルテレビ分野でも三大陣営の熾烈な激突が続く。


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