悪夢のシナリオ２－その後の動き－

　前段の「悪夢のシナリオ－その背景－」をアップしてから２ヶ月が過ぎんとしている。前回指摘したように、乱売、そして加入者増は益々激しさを増し、悪夢のシナリオへの道がいよいよ現実味を帯びてきた。　この間の通信業界の主な動きは以下のとおりである。移動体分野だけでなく、第３章の「業界再編の行方」に関連するであろう、通信業界全般にわたる出来事について新聞記事を中心にまとめてみた。

＜移動体通信＞

シャープ、デジタルコードレス電話拡販でＰＨＳとのセット販売を推奨。据え置き型電話機の国内出荷は年間３００万台で低迷。（96/08/06　日経流通）
ＰＨＳ販促策に負の効果。１円端末、自販機、牛ドン・ＧＳの景品など激安端末は短期解約（解約率４～５％）、不正転売を招き、投下経費回収困難に。京セラが携帯・ＰＨＳ一体型端末の開発を見送るなど製品開発への悪影響も（96/09/18　日経産業）
ＮＴＴドコモ、インセンティブを積み増し、携帯電話店頭価格を全品１～２万円値下げ。（96/09/20　日刊工業）

どこまで伸びる移動電話、２０００年の市場を占う。（96/09/23　日本経済）

シナリオ１…○（６０％）来年度から安定成長に移行
２０００年に携帯＋ＰＨＳで３５００万台前後。携帯のほうが収益体質に優れ料金値下げ余力有り。ＰＨＳは苦しく垂直統合が意外に早く進む可能性も。

シナリオ２…△（３０％）急成長続き通常電話と肩を並べる
現在のペースが続けば６０００万台に。音声、簡単なデータ通信は移動電話主役。固定電話は動画像伝送などマルチメディア主体に。再編は移動体軸に。

シナリオ３…×（１０％）需要一巡で成長鈍化
３０００万台弱に。ドコモが他社を駆逐し再編不可避。

乱売合戦続く携帯電話。代理店への奨励金積み増しで新規加入を無理に拡大。解約率の増加も懸念。（96/09/26　日刊工業）
ＤＤＩポケット、来春の統一方式(32Kbps)に先行し、独自方式のＰＨＳ高速データ通信サービス(14.4Kbps)を１２月より開始。（96/09/26　日経産業）
ドコモ、ポケベル活性化のため、２年後目処に基本料ゼロ・発信者課金で、５００円の超低価格端末（呼出音のみ、バイブ・液晶表示無）投入。（96/10/01　日本工業）
ＤＤＩ、移動体通信専門のインターネットプロバイダー事業への参入検討。（96/10/03　日本工業）
ＰＨＳ市場拡大、今年度中に６００万台突破。裏ではインセンティブ競争激化、各社の経営圧迫、赤字は膨らむばかり。携帯は相変わらず爆発的に売れＰＨＳを凌駕、果して市民権を得れるか。来春の３２ビットデータ伝送サービスは市場変化（ビジネス層拡大）の決め手となるか。（96/10/07　日刊工業）

＜長距離・地域系通信＞

日本テレコム、９９年３月を目処に海底ケーブルも敷設し全国光環状網を完成。１０００億投じ全国を複線化。（96/07/13　日本経済）
ＮＴＴ、加入者回線の光ファイバー化を正式発表。銅線並コストで敷設できる「πシステム」採用、十数件の加入者が共有する小型化した光回線終端装置（ＯＮＵ）を電柱などに設置し、電柱から家庭までは従来の銅線で対応。９７年度末から導入し、２０１０年までに全国配備。（96/07/25　日経産業）
長距離系ＮＣＣ３社、回線獲得協定（リプレース協定）を破棄。日本テレコムが営業拡大の足かせとして２社に破棄を通告。競争再び泥沼化へ。（96/08/21　日本工業）
米２７００万世帯が長距離電話会社乗り換え。「１００ドルあげます」が誘い水。
通信法改正で安売り競争激化。長距離、地域、ＣＡＴＶ、携帯、インターネット、衛星放送などをパッケージで売り込むためのユーザーの囲い込みと、間近に迫った地域電話会社との競合を有利に進めるのが狙い。（96/08/26　日経ビジネス）
ＴＴＮｅｔ、９８年開始の市内接続サービス（通話料３分９円予定）で年間１００万加入獲得、２００２年にはシェア２０％の４００万を目標。商社、関電工、日産など株主の販売チャネル活用。専用アダプタの無料配布も計画。（96/08/30　日本工業）
日本テレコム、ＣＡＴＶ事業を加速。東名阪中心に年度内１１～１３社に出資（現在１７局）。２０００年には３００万世帯カバー。ＣＡＴＶ網を地域網として活用していく模様。（96/09/13　日本工業）
京セラ稲盛会長仏門へ。来年１月満６５歳機に期末の改選期で京セラグループすべての会長から閑職（名誉会長）に退き、仏門へ。人生哲学を集大成し人様の手助けをしたい。求心力喪失も、特にＤＤＩの打撃大きい？（96/10/01　日経産業）

＜国際通信＞

ＩＴＪ、英ＢＴと米ＭＣＩの合弁企業「コンサート」のＶＮＳ（グローバル音声仮想通信網）サービスを国内で開始。（96/08/05　日経産業）
ＫＤＤ、国際・国内一体型の大口割引サービスを９７年中にも開始。企業ユーザー取り込み、「垣根撤廃」加速も。（96/08/17　日刊工業）
ＫＤＤ、超高速・大容量・長距離伝送実験に成功。ＡＴ＆Ｔと共同で２０００年までに敷設計画中の日米海底ケーブルに弾み。（96/09/11　日経産業）
ＫＤＤ、国内進出構想発表。ＪＩＨ（ジャパン・インフォメーション・ハイウェイ）構想と呼ぶ日本列島を取り巻く大容量（電話回線１２０万相当の１００ギガ／秒）光ケーブル敷設構想。総延長８５００Ｋｍ、投資１０００億。９９年央からの運用開始を想定、全国２０ヵ所で地域系通信事業者と接続。（96/10/07　日本工業）

＜ＮＴＴ関連＞

ＮＴＴ社長国際通信に意欲。多国籍企業を対象とした高度通信サービスを念頭に、外国キャリアとの連携も考慮。橋本首相のＮＴＴの国際進出支援の意向も背景に。（96/08/29　日経産業）
ＮＴＴ、ＣＡＴＶ会社に映像伝送サービスを提供。光ファイバーアクセス網で初の商用放送サービス。一本の光ケーブルに通信と放送相乗り。（96/09/27　日経産業）

ＮＴＴの国際進出に関する国際系各社の意向。（96/09/30～10/02 日本工業）

ＫＤＤ…強く反対。公正競争問題未解決のままでは、地域網独占状態をそのまま国際市場に持ち込むだけ。今後ワールドパートナーズの中で主導的役割を発揮。

ＩＤＣ…単なる反対ではない。世界の潮流を直視すべき。ＮＴＴは国益面からも国際分野で活躍すべきで、ＫＤＤの国内参入以前に長距離ＮＣＣが国際に参入、これをトリガーに国際系はアライアンスの嵐が。さらに進めば合併も。

ＩＴＪ…反対。現状では３５００億の市場に過当競争を招くだけ。分離された長距離会社が参入しても、これに対抗するには合従連衡しかない。ＩＴＪの株主にはＢＴ、仏テレコムが参画、具体的な行動は来春以降に。

ＮＴＴ、ＯＣＮの概要発表。１２月にも東京など一部地域で先行サービス開始予定。（96/10/10　日経産業）
個人ダイアルアップ接続：２３００円（１５Ｈまで、以降９円／分）
低速専用線（１２８Ｋビット）：３７０００円／月

＜衛星系　等＞